商標:不使用取消審判(第6回)

第6回:他社に使わせるなら必須!「使用許諾(ライセンス)」と証拠

1.他社による使用は認められるのか
(1)実務で多い利用形態
  中小企業においては、次のように商標を他社が使用するケースが一般的に見られます。
 ① 子会社による商品販売
 ② フランチャイズ加盟店による店舗運営
 ③ 販売代理店による役務提供
(2)法的な基本原則
  商標法上、商標権者は他人に対して商標の使用を許諾することができます(いわゆる使用許諾)。
(3)不使用取消審判との関係
  適法な使用許諾に基づく使用は、商標権者自身の使用と同様に評価されます(商標法第50条の運用)。
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2.使用許諾(ライセンス)の法的枠組み
(1)使用許諾の類型
  商標法上の使用許諾には、主に次の類型があります。
 ① 通常使用権(商標法第31条)
 ② 専用使用権(商標法第30条)
(2)不使用取消審判における位置付け
  いずれの類型であっても、
 ① 商標権者の意思に基づく許諾が存在し
 ② その範囲内で使用されている
  場合には、有効な使用として認められ得ます。
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3.最大のポイントは「許諾関係の立証」
(1)立証責任
  不使用取消審判では、商標権者側が「許諾に基づく使用」であることを証明する必要があります。
(2)問題となる典型例
  実務上、次のようなケースはリスクが高いといえます。
 ① 親子会社間で契約書を作成していない
 ② 長年の取引関係に基づく口頭合意のみ
 ③ 契約書はあるが商標使用に関する規定が不明確
(3)評価の帰結
  これらの場合、「商標権者の意思に基づく使用」と認められず、第三者による無関係な使用と評価されるおそれがあります。
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4.契約書がない場合のリスク
(1)典型的な判断構造
 ① 使用の事実自体は認められる
 ② しかし許諾関係が証明できない
  この場合、「第三者が独自に使用していた」と評価される可能性があります。
(2)結果
  商標権者による使用とは認められず、不使用と判断されるリスクがあります。
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5.グループ企業間での使用の注意点
(1)法人格の独立
  親会社と子会社は、法的には別個の主体として扱われます。
(2)必要となる要素
 ① 明確な使用許諾の存在
 ② 使用態様に対する管理・統制の実態
(3)実務上の誤解
  「グループ内だから問題ない」という認識は通用せず、形式・実態の双方から許諾関係を裏付ける必要があります。
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6.フランチャイズ・代理店における留意点
(1)契約内容の明確化
  契約書において、次の点を明確にする必要があります。
 ① 使用主体(誰が使用するのか)
 ② 使用対象(どの商標か)
 ③ 使用範囲(商品・役務、地域等)
(2)期間の整合性
  契約期間が、不使用取消審判で問題となる期間(直近3年)をカバーしているかが重要です。
(3)形式と実態の一致
  契約書が存在していても、実際の使用態様と乖離している場合には、十分な証拠とは評価されません。
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7.証拠として準備すべき資料
(1)契約関係の証拠
 ① 使用許諾契約書(署名・日付入り)
 ② 覚書、更新合意書等
(2)使用実態の証拠
 ① 商品・店舗・広告の写真
 ② パンフレット、ウェブサイトの表示
 ③ アプリやサービス画面
(3)取引関連資料
 ① 納品書
 ② 請求書
 ③ 契約書類
(4)立証のポイント
  「誰が」「どの商標を」「どの商品・役務について」「どの期間」使用していたかを、一貫して説明できることが重要です。
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8.「使わせているつもり」のリスク
(1)実務上の典型的な問題
 ① 実際には使用されている
 ② しかし法的裏付けがない
(2)不使用取消審判での評価
 商標の使用は、
 ① 使用の事実だけでなく
 ② 商標権者の意思に基づくかどうか
 まで含めて判断されます。
(3)結論
 「使わせているつもり」という状態では、防御として不十分です。
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9.経営者としての実務対応
(1)契約の書面化
  グループ企業間であっても、簡易なもので足りるため、必ず使用許諾契約を作成することが必要です。
(2)契約内容の見直し
  フランチャイズ契約や代理店契約において、商標使用条項が明確かを確認します。
(3)実態との整合
  契約内容と実際の使用状況が一致しているかを定期的に確認します。
(4)証拠の継続的保存
  使用実態を裏付ける資料は、日常的に整理・保存しておくことが不可欠です。
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10.まとめ
  他社による商標の使用であっても、適法な使用許諾に基づくものであれば、商標権者の使用として評価されます。
 しかし、
 ① 許諾関係の立証
 ② 使用実態の証明
 ができなければ、不使用と判断されるリスクがあります。
 「実際には使っていたにもかかわらず負ける」という事態を防ぐためには、契約の整備と証拠の蓄積を平時から行うことが不可欠です。

本記事についてのご相談:
 「不使用取消審判」の請求側、請求された商標権者側、どちらのご相談もお受けいたします。
 商標法上の使用となっているか、指定商品・指定役務についての使用となっているか、取得したい商標の商標権者が使用しているかどうかを調べたいなど、お気軽にご相談ください。

   弁理士 矢口和彦事務所
         所長 弁理士  矢 口 和 彦

2026年04月24日