商標:不使用取消審判(第7回)

第7回:証拠がすべてを決める!「使っていたのに負ける」典型パターン

1.不使用取消審判における立証構造
(1)立証責任の所在(商標法第50条)
 不使用取消審判では、商標権者側が「使用していた事実」を証明する責任を負います。
(2)制度の特徴
 ① 請求人が不使用を証明する必要はない
 ② 権利者が使用を証明できなければ取消しとなる
(3)実務上の帰結
 実際に使用していたとしても、証拠として裏付けることができなければ「不使用」と同様に扱われます。
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2.不十分と評価されやすい証拠の類型
(1)時期が特定できない資料
 ① 日付の記載がないパンフレット・カタログ
 ② 作成時期が不明な画像・PDF
 これらは、対象期間(審判請求前3年以内)の使用を証明できません。
(2)商品・役務との結び付きが不明な資料
 ① 商標のみが写っている写真
 ② 商品やサービス内容が特定できない表示
 商標法第2条第3項の「使用」との関係が不明確となります。
(3)外部性を欠く資料
 ① 社内資料
 ② 内部向けの企画書・説明資料
 外部に向けた使用とは認められないのが原則です。
(4)客観性に乏しい資料
 後日作成の可能性を排除できない資料は、証拠価値が低く評価される傾向にあります。
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3.広告資料の限界
(1)広告のみでは不十分となる場合
 広告は商標の使用態様の一つですが、それ単独では決定的な証拠とならない場合があります。
(2)問題となるケース
 ① 広告は存在するが実際の販売・提供がない
 ② サービスの提供実態が確認できない
(3)判断のポイント
 特に役務については、
 ① 実際に提供されているか
 ② 顧客との取引が存在するか
 が重視されます。
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4.ウェブ証拠に関する注意点
(1)典型的な問題点
 ① 更新日・掲載時期が不明
 ② 現在の画面しか保存されていない
 ③ URLや運営主体が特定できない
(2)証拠価値の限界
 ウェブページは改変が容易であるため、単独では証拠としての信用性が弱いと評価されることがあります。
(3)実務対応
 取引資料等と組み合わせて提出することが重要です。
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5.有効な証拠の組み立て方
(1)基本的な考え方
 証拠は「点」ではなく「線」として構成する必要があります。
(2)組み合わせの例
 ① 商標が表示された商品・広告の資料
 ② 納品書・請求書等の取引資料
 ③ パンフレット・ウェブ資料等の時期を示す資料
(3)立証の完成形
 これらを組み合わせることで、「誰が」「どの商標を」「どの商品・役務に」「いつ使用し」「取引があったか」を一貫して説明できる状態が求められます。
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6.典型的な敗北パターン
(1)証拠が断片的である
 個々の資料が相互に関連付けられておらず、使用事実としての一体性が認められない場合
(2)対象期間を外している
 審判請求前3年以内の証拠が存在しない、又は不足している場合
(3)使用主体が不明確
 誰が商標を使用していたのかが特定できない場合(ライセンス関係の不備を含む)
(4)商標の識別が困難
 表示が小さい、判読不能である等により、登録商標との同一性が確認できない場合
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7.日常的な証拠管理の重要性
(1)事後収集の困難性
 不使用取消審判では、過去の使用を遡って証明する必要がありますが、事後的に証拠を揃えることは極めて困難です。
(2)平時の対応
 ① パンフレット・広告物に日付を明記する
 ② ウェブページのスクリーンショットを定期保存する
 ③ 取引書類を体系的に保管する
(3)実務的意義
 商標の使用状況を継続的に記録・保存する体制が、最も有効な防御手段となります。
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8.まとめ
 不使用取消審判においては、
 ① 使用の事実そのものではなく
 ② それを裏付ける証拠の質と構成
 が勝敗を決定づけます。
 したがって、
 ① 客観性
 ② 時期の明確性
 ③ 商品・役務との結び付き
 を備えた証拠を、日常的に蓄積することが不可欠です。
 適切な証拠管理を行うことで、「使っていたにもかかわらず負ける」というリスクは、確実に回避することができます。

本記事についてのご相談:
 「不使用取消審判」の請求側、請求された商標権者側、どちらのご相談もお受けいたします。
 商標法上の使用となっているか、指定商品・指定役務についての使用となっているか、取得したい商標の商標権者が使用しているかどうかを調べたいなど、お気軽にご相談ください。

弁理士 矢口和彦事務所
         所長 弁理士  矢 口 和 彦

2026年05月01日