商標ライセンス(第3回)

第3回 フランチャイズだけではない商標ライセンス活用法
~実は多くの中小企業がすでに使っている仕組み~

 前回は、商標ライセンスの基本的な仕組みと、専用使用権・通常使用権について解説しました。
 商標ライセンスという言葉を聞くと、多くの方はコンビニエンスストアや飲食チェーンのフランチャイズを思い浮かべるかもしれません。確かにフランチャイズは代表的な商標ライセンスの例です。
 しかし、商標ライセンスの活用場面はそれだけではありません。実際には、多くの中小企業が気付かないうちに商標ライセンスに関係する事業活動を行っています。
 今回は、中小企業でよく見られる商標ライセンスの活用事例をご紹介します。

フランチャイズは商標ライセンスの代表例
 まずは分かりやすい例から見てみましょう。
 フランチャイズでは、本部が保有する商標を加盟店が使用します。加盟店は、そのブランドの知名度や信用を活用して事業を行います。一方、本部は加盟金やロイヤルティを受け取ります。
つまり、
• ブランドを貸す側
• ブランドを借りる側
という関係が明確です。
 商標ライセンスの典型例といえるでしょう。もっとも、中小企業の場合、全国規模のフランチャイズを目指すケースばかりではありません。
 実際にはもっと身近な場面で商標ライセンスが利用されています。

販売代理店にブランドを使わせる
 例えば、自社製品を全国に販売したいと考えた場合です。各地域の販売代理店に営業活動を委ねることがあります。
その際、代理店は、
• 商品カタログ
• ホームページ
• 広告
• 展示会
などでブランド名やロゴを使用することになります。
 これは商標ライセンスの一種と考えることができます。販売代理店に商標の使用を認めることで、自社だけでは届かない市場にブランドを広げることができます。
 一方で、「どのような広告表現を認めるのか」「ロゴの使用方法はどうするのか」
といったルールを定めておかないと、ブランドイメージが損なわれる可能性があります。

OEMや製造委託でも商標ライセンスは登場する
 製造業ではOEMや製造委託もよく行われています。
 例えば、自社ブランドの商品を外部企業に製造してもらうケースです。完成した商品には自社の商標が表示されます。この場合、製造委託先は商標を付した商品を取り扱うことになります。
ブランドオーナーとしては、
• 品質基準
• 表示方法
• 使用範囲
などを明確にしておく必要があります。
 品質管理が不十分だと、最終的に損害を受けるのはブランドそのものだからです。

子会社や関連会社で同じブランドを使う
 中小企業で非常によく見られるのがこのケースです。
 例えば、製造会社と販売会社を分けている。あるいは事業ごとに法人を分けている。そのような場合でも、ブランドは共通で利用したいことがあります。経営者からすると、「自分の会社なのだから問題ない」と思われるかもしれません。
 しかし法律上は別の法人です。
 そのため、商標の利用関係を整理しておくことが望ましい場合があります。特に事業承継や会社売却の場面では、「誰が商標を使う権利を持っているのか」が重要な論点になることがあります。

地域ブランドの共同利用
 近年は地域ブランドの活用も増えています。
例えば、
• 特産品
• 観光事業
• 地域イベント
などで共通ブランドを使用するケースがあります。
 複数の事業者が同じブランドを利用するため、
• 誰が管理するのか
• 誰が使用できるのか
• 品質基準をどうするのか
を明確にしておく必要があります。
 こうした場面でも商標ライセンスの考え方が重要になります。

商標ライセンスは事業拡大のための道具
 ここまで見てきたように、商標ライセンスは単なる法律上の仕組みではありません。
 経営の視点で見ると、「他者の力を活用して事業を拡大するための道具」と考えることができます。
 自社だけでできることには限界があります。しかし、信頼できるパートナーと協力しながらブランドを展開すれば、より大きな市場に進出できる可能性があります。商標ライセンスは、そのための重要な手段の一つです。

事業拡大にはメリットだけでなくリスクもある
 もっとも、ブランドを広げれば広げるほど管理は難しくなります。
例えば、
• 品質がばらつく
• 不適切な広告が行われる
• 契約終了後も商標が使われる
• ブランドイメージが損なわれる
といった問題が起こる可能性があります。
 商標ライセンスは、ブランド価値を高めることもできますが、管理を誤ればブランド価値を下げることにもなります。
 そのため、「誰にでも貸せばよい」というものではありません。適切な契約と管理が欠かせないのです。

次回予告
 ここまで3回にわたり、商標ライセンスの基本的な考え方と活用場面について解説してきました。
 次回は、多くの経営者が最も関心を持つテーマの一つ、
 「ライセンス料はいくらにすればよいのか」について解説します。
 商標を貸す側はどのように使用料を決めるのか。また、商標を借りる側はどのような点に注意すべきなのか。ロイヤルティの考え方を分かりやすくご説明したいと思います。

2026年06月19日