商標ライセンス(第4回)

第4回 ライセンス料はいくらにすればよいのか
~ロイヤルティの決め方と中小企業の現実的な考え方~

 前回は、中小企業における商標ライセンスの活用事例をご紹介しました。その中で、「商標を貸すことで収益を得ることができる」というお話をしました。
 すると多くの経営者の方から、「では、いくらで貸せばよいのですか」という質問をいただきます。
 確かに気になるところです。しかし、商標ライセンス料には不動産の賃料のような明確な相場があるわけではありません。
 同じ商標であっても、業種やブランド力、契約内容によって金額は大きく変わります。
 今回は、ライセンス料(ロイヤルティ)の考え方について解説します。

商標ライセンス料に「定価」はない
 例えば、駅前のオフィスビルであれば、近隣の賃料相場を参考にできます。
 一方、商標ライセンスの場合は事情が異なります。なぜなら、商標の価値そのものが企業ごとに異なるからです。
例えば、
• 全国的に知られているブランド
• 地域で高い知名度を持つブランド
• これから育てていくブランド
では価値が異なります。
また、
• 商品に使うのか
• 店舗名に使うのか
• 全国で使うのか
• 特定地域だけで使うのか
によっても価値は変わります。
 そのため、「商標ライセンス料の相場はいくらですか」という質問には、一律に答えることができません。

ロイヤルティの代表的な決め方
 実務では、主に次のような方法が用いられます。
固定額方式
毎月または毎年、一定額を支払う方式です。
例えば、
• 月額3万円
• 年額50万円
といった形です。
 売上に関係なく金額が決まるため、計算が簡単というメリットがあります。
 一方で、事業が大きく成長した場合でも収入が増えないという面があります。
売上歩合方式
 売上高に一定割合を掛けて計算する方式です。
例えば、
「対象商品の売上高の3%」
といった形です。
 フランチャイズなどでよく見られます。事業が成長すればライセンサー(貸す側)の収入も増えるため、双方の利害が一致しやすい方法です。
 ただし、売上の把握や報告の仕組みが必要になります。
固定額と歩合の併用
 実務では、
• 最低保証額
• 売上歩合
を組み合わせることもあります。
 例えば、「年間30万円を最低保証とし、売上高の3%を支払う」という方法です。ブランド価値が高い場合に採用されることがあります。

中小企業では高額ロイヤルティよりも重要なことがある
 中小企業の経営者の方は、「できるだけ高く貸したい」と考えることがあります。もちろん、それ自体は自然なことです。
 しかし、現実にはライセンス料だけを追求すると契約が成立しないことがあります。
例えば、
• 販売代理店
• 業務提携先
• 関連会社
などの場合です。
 こうしたケースでは、ライセンス料そのものよりも、
• 販路拡大
• 売上増加
• ブランド認知度向上
といった効果の方が大きい場合があります。
 つまり、「商標を貸していくら儲かるか」だけではなく、「商標を貸すことで事業全体にどのような利益があるか」を考えることが重要です。

無償ライセンスという選択肢もある
 商標ライセンスというと、有償が当然と思われるかもしれません。しかし実際には無償で利用を認めるケースもあります。
例えば、
• 子会社
• 関連会社
• 業務提携先
• 地域団体
などです。
 重要なのは、使用料を取るかどうかではありません。誰がどのような条件で使用できるのかを明確にすることです。無償だから契約が不要というわけではありません。
 むしろ、無償であるからこそ利用条件を明確にしておく必要があります。

金額以上に重要な「ブランド管理」
 ライセンス料の交渉になると、どうしても金額ばかりに目が向きがちです。しかし、商標ライセンスの本質はブランドの利用許諾です。
 仮に高額なロイヤルティを得られたとしても、
• 品質が低下した
• クレームが増えた
• ブランドイメージが悪化した
という結果になれば意味がありません。
 ブランドは企業の信用そのものです。商標ライセンスでは、収益とブランド保護のバランスを取ることが重要になります。

まず決めるべきは金額ではない
 実務では、「ロイヤルティはいくらにするか」より先に決めるべきことがあります。
それは、
• 誰に使わせるのか
• 何に使わせるのか
• どこで使わせるのか
• いつまで使わせるのか
という基本条件です。
 これらが決まらなければ、適正なライセンス料も決まりません。つまり、ライセンス料は契約条件全体の一部にすぎないのです。

次回予告
 ここまで商標ライセンスの仕組みや活用方法、ライセンス料の考え方について解説してきました。しかし、実際のトラブルの多くは、「金額」ではなく、「契約内容」が原因で発生しています。
 次回は、「契約書に必ず入れるべき重要条項」をテーマに、中小企業が押さえておきたいライセンス契約のポイントをご紹介します。
 なぜ口約束では危険なのか。なぜインターネット上のひな形だけでは不十分なことがあるのか。実務上の視点から解説したいと思います。

2026年06月26日