著作権(第12回)国際的な著作権の違いと保護:海外ではどう守られるのか?
第12回 国際的な著作権の違いと保護:海外ではどう守られるのか?
はじめに
前回は、自身の著作権が侵害された場合の対処法について解説しました。今回は、グローバル化が進む現代において重要なテーマである「国際的な著作権の違いと保護」について掘り下げていきます。
著作権の保護は、各国が定める法律に基づいて行われるため、その制度や内容は国によって異なります。海外で自身の著作物を保護するためには、各国の著作権法の違いを理解し、適切な対策を講じる必要があります。また、国際的な著作権保護の枠組みを知ることも重要です。本稿では、主要な国際条約、各国における著作権法の主な違い、そして海外で著作権を保護するための対策について解説します。
1. 主要な国際著作権条約
著作権の国際的な保護の基礎となっているのは、主に以下の条約です。
(1)ベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)
① 概要:1886年に成立した、著作権に関する最も重要な国際条約の一つです。多くの国が加盟しており、著作物の国際的な保護の原則を定めています。
② 主要な原則: * 内国民待遇の原則: 加盟国の国民の著作物は、他の加盟国においても自国民の著作物と同様に保護されます。 * 無方式主義の原則:
著作権の保護は、登録などの特別な手続きを必要とせず、著作物が創作された時点で自動的に発生します。 * 保護期間の最低基準: 個人の著作者の著作物については著作者の生存期間および死後50年間、映画の著作物については公表後50年間など、保護期間の最低基準を定めています。
(2)万国著作権条約(ユネスコ著作権条約)
① 概要:ベルヌ条約に加盟していない国も含む、より広範な国々が加盟する著作権条約です。ベルヌ条約よりも柔軟な規定が多く、方式主義(著作権表示の義務など)を認めています。
② 主要な原則: * 内国民待遇の原則: ベルヌ条約と同様の原則を定めています。 * 方式主義: 一定の著作権表示(©マーク、著作者名、最初の発行年)を行うことで、著作権の存在を主張できます。
* 保護期間の最低基準: ベルヌ条約と同様の最低基準を定めています。
(3)TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)
① 概要:世界貿易機関(WTO)の協定の一つであり、著作権を含む知的財産権の保護に関する国際的な最低基準を定めています。WTO加盟国は、TRIPS協定の規定を国内法に反映させる義務があります。
② 主要な特徴:ベルヌ条約の主要な原則を包含しつつ、デジタル時代の著作権保護や権利行使に関する規定を強化しています。
(4)WIPO著作権条約(WCT)およびWIPO実演・レコード条約(WPPT)
① 概要:世界知的所有権機関(WIPO)が管理する条約で、デジタル環境における著作権および著作隣接権の保護を強化することを目的としています。
② 主要な特徴:コンピュータプログラムの著作物としての保護、データベースの保護、技術的保護手段の回避に対する規制、権利管理情報に関する義務などを定めています。
2. 各国における著作権法の主な違い
上記のような国際条約によって、著作権保護の基本的な原則は多くの国で共通化されていますが、細部においては各国で異なる規定が存在します。
(1)保護期間
ベルヌ条約は保護期間の最低基準を定めていますが、多くの国ではそれを上回る保護期間を採用しています。例えば、日本やEU加盟国の多くは、個人の著作者の著作物の保護期間を死後70年としています。一方、国によっては死後50年を採用している場合もあります。
(2)権利の種類と範囲
著作権が保護する権利の種類やその範囲も、国によって若干異なることがあります。例えば、翻案権の範囲、私的使用の例外規定、フェアユース(またはそれに相当する規定)の具体的な内容などが異なる場合があります。アメリカのフェアユース原則は、日本の権利制限規定よりも広範な利用を認める可能性があります。
(3)著作人格権の有無と内容
著作人格権は、著作者の人格的な利益を保護する権利ですが、その有無や内容は国によって大きく異なります。例えば、アメリカの著作権法には包括的な著作人格権の規定はありませんが、「Visual
Artists Rights Act of 1990(VARA)」によって美術および写真の著作物について限定的な著作人格権が認められています。一方、ヨーロッパ諸国では、著作人格権が強く保護される傾向があります。
(4)著作権登録制度
ベルヌ条約は無方式主義を採用していますが、国によっては著作権登録制度を設けている場合があります。登録は権利発生の要件ではありませんが、紛争が生じた際の証拠として役立つことがあります。アメリカでは、著作権侵害訴訟を提起する前に原則として著作権登録が必要です。
(5)強制許諾制度
特定の種類の著作物について、著作権者の許諾なしに利用できる代わりに、相当な対価を支払うことを義務付ける強制許諾制度を採用している国もあります。例えば、放送局による音楽著作物の利用などが対象となる場合があります。
3. 海外で著作権を保護するための対策
海外で自身の著作権を保護するためには、以下の対策を検討する必要があります。
(1)国際条約の理解
自身の著作物が、ベルヌ条約や万国著作権条約などの国際条約によって、どの国でどのように保護されるのかを理解しておくことが基本です。
(2)主要な国における著作権法の調査
進出を検討している国や、自身の著作物が利用される可能性のある国における著作権法の保護期間、権利の種類、権利制限規定などを事前に調査しておくことが重要です。
(3)著作権表示の適切な実施
著作物には、©マーク、著作者名、最初の発行年などを適切に表示することで、著作権の存在を周知し、注意喚起を促します。
(4)海外での著作権登録の検討
特に重要な著作物については、進出先の国で著作権登録を行うことを検討します。登録は必須ではありませんが、権利侵害が発生した場合の証拠として有効となることがあります。
(5)契約による権利保護
海外の事業者と著作物の利用に関する契約を結ぶ際には、利用範囲、期間、対価などを明確に定め、不利な条件がないか専門家のチェックを受けることが重要です。
(6)海外での権利行使の検討
海外で著作権侵害が発生した場合は、現地の弁護士などの専門家に相談し、差止請求や損害賠償請求などの法的措置を検討します。海外での権利行使は、言語や法制度の違いなど、国内とは異なる課題があるため、専門家のサポートが不可欠です。
(7)国際的な権利管理団体の利用
音楽や映像などの著作物については、国際的なネットワークを持つ著作権管理団体を通じて、海外での利用料徴収や権利行使を委託することを検討できます。
むすび
今回は、国際的な著作権の違いと保護について解説しました。著作権の保護は、国際条約によって基本的な原則は共有されているものの、各国で異なる規定が存在するため、海外で自身の著作物を保護するためには、各国の法律や制度を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
グローバルな視点を持ち、自身の著作物を適切に保護することで、海外でのビジネス展開や創作活動を安心して行うことができるでしょう。
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